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どこかの和室の真ん中で、おばあさんは布団に横たわっていた。
その周りには、母親らしき人に抱かれ泣いている赤ん坊や小さな子供、若い男女に中年の男女が大勢取り囲んでいた。
みんな不安げな表情で、おばあさんを見つめているようだった。
「私の息子夫婦と孫夫婦とひ孫たちよ」
おばあさんはそう言って目を細めた。
横たわるおばあさんの右手を握っている初老の男性が息子だという。
おばあさんは自身の右手を左手で握った。
右手の小指に繋がる光る糸は、死んでほしくないという願いが具現化したものだと天使は言った。
俺にも、その光の糸が伸びている。
愛されているという証だ。
おばあさんは、「ああ、幸せな人生だったわ」と微笑み、もう十分だと天使に伝えた。
死んでほしくないと願う人がこれだけたくさんいるにもかかわらず、おばあさんはもうあの世に旅立つと言い出した。
寝たきりの自分は家族に負担をかけてしまい、これ以上は迷惑かけたくない。
願いの糸が輝くうちに向こうにいきたいと言った。
天使は了承すると、ファイルの中からばあさんの履歴書を取り出した。
天国に行った時に使う書類だという。
天使の後ろに再び光のドアが現れると、おばあさんは再び泉に自分と家族を映しだし、家族に届けるように叫んだ。
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