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一人になってしまった俺は、自分の走馬灯を確かめようと泉の前に立った。
俺は集中し、何故ここにいるのかを知りたいと強く願い泉を覗き込んだ。
すると、水面が静まりゆっくりと映像が浮かび上がった。
それは、車の運転席で信号待ちをしている光景だった。
「はい、すみません。急いでこれから向かいます」
俺は携帯で誰かと話しながら、どこかに向かう途中のようだった。
信号が変わり車を走らせた途端、大きなクラクションの後に一瞬見えたのは、運転席の横から迫りくる大型トラックの姿だった。
衝撃音と共に、映像は真っ暗になった。
体が自然と震えだした。
忘れていた記憶が蘇る。
恐る恐る、俺は右手を泉に入れる。
すると、今度はおっさんの時のように、病室のベッドに横たわる男が見えた。
自分かどうかもわからないほど顔に包帯が巻かれ、心電図の音が響いていた。
その横で、俺の手を握っていたのは、愛を誓い合ったばかりの最愛の女性だった。
妻は泣き腫れた顔で、俺の手を擦っていた。
それを見た瞬間、俺は死にたくない、と強く願った。
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