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俺がその場を離れようとした時、どこからかドアをノックするような音が三度聞こえた。
どこにもドアらしきものはなく戸惑っていると、音を聞いたおっさんは慌ててどこかへ走っていってしまった。
突然、空間に長方形の明るい光が現れると、ギ―っというドアの開く音と共にそのドアは開かれた。
そして現れたのは、白い正装姿で肩に白いバッグを提げた小さな少年だった。
ドアの向こうは眩い光で見ることが出来ず、ドアが閉ざされると同時に光とドアは消えた。
少年は俺とおばあさんの顔を見るなり、バッグの中から分厚いファイルを取り出して中を確認しながら言った。
「新しく来られた方ですね。はじめまして。私は皆様を安全に天国までエスコートさせていただく命を受けている者です。お二人はまだこちらに来たばかりのようですので、まだ書類作成が済んでいないようです。作成が終わりましたら、またお迎えに参ります。しばらくお待ちいただければと思います」
矢継ぎ早に訳の分からない事を言われ、俺は唖然としていた。
天国?
お迎え?
「あなた、天使さんなの?」
おばあさんがそう尋ねた。
「簡単に言えば、そうですね」
「じゃあ、私死んだのかしら」
「どうでしょうか。ここは魂の待合室のような場所です。既に亡くなった人、これから亡くなる人の魂が来る場所で、後者の場合ですとまだ肉体と魂が完全に切れていないため、私たちの書類にはまだ載っておりません。書類に載っていない方は、天国には連れていけない決まりになっています。ただ例外を除いては、基本的にここを訪れた方を見つけたら、書類作成の準備に入ることになっております」
「そう」
ばあさんは、肩を落とした。
それもそうだ。
天使の話が確かなら、少なくとも死に際に立っているということになる。
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