最後に集う場所

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だが、俺は何故ここにいるんだろうか。 少し前の自分を思い出そうとするも、まるで思い出せない。 「近藤秀夫さん、こちらで見かけませんでしたか? 60代の男性で痩せ型の手首に紐のようなものをつけてる方なのですが」 天使は紐だと言ったが、特徴からさっきまでいたおっさんの事だろうと直感した。 「そのおっさんを捕まえに来たってことですか?」 「捕まえるだなんてとんでもない。私たちは強制などしません。ですが、彼は一度魂と体が離れ、体はすでに……。おっと、これは個人情報でしたね。また改めて参りたいと思います。それでは」 そう言うと、再び光のドアが現れた。 「ちょっと待ってくれ!」 咄嗟に俺は天使を引き留め、自分がなぜここにいるのかを尋ねた。 すると天使は、ある方向を指差した。 そこには、ひときわ明るい青い光を放つ鍾乳石があった。 「あそこに青く輝く泉があります。水面を覗くと、自身が体験した過去の出来事を見ることができますよ。いいことも悪いことも。勇気があれば、ご覧になってみたらいかがですか?」 まるで死に際に見える走馬灯のようだと、おばあさんは言った。 「そうです。走馬灯の泉です。自分がここにいる理由もわかると思います」 天使はそう言うと、ドアを開けて眩い光の中に帰って行った。
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