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天使が帰ると、鍾乳石に隠れていたおっさんが戻って来た。
「危ない、危ない。地獄に連れていかれるところだった」
どうやらおっさんは自分が地獄に連れていかれると思い、あの天使から逃げ回っているそうだ。
「地獄に送られるほど、悪いことでもしたんですか?」
冗談のつもりで俺はおっさんに言ったのだが、真に受けたようで黙り込んでしまった。
「それにしても、天使ちゃん可愛かったわねぇ」
ばあさんは目を細めてそう言った。
「何が天使ですか。俺、まだ死んじゃいませんよ」
「あなたはまだ若いから、受け入れ難いでしょうね」
「だから、死んでませんって!」
「それなら、走馬灯の泉を見たらいいじゃないか」
おっさんは俺にそう言った。
それを見れば、確かに俺がここにいる理由もわかるかもしれない。
忘れている何かが。
俺は、青く光る走馬灯の泉に向かった。
複数の足音に気づき振り返ると、ばあさんとおっさんが俺の後をついてきた。
ばあさんは「私も見てみたくて」と興味津々な様子。
おっさんは暇つぶしだとに意地悪そうに笑いながらついてきた。
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