第一章 屋根族とは

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 教える立場の緊張が消え、楽しく高揚していく。 「マナーもある。窓が遠くにあろうと覗いちゃいけないぞ。俺たちの視力は双眼鏡並みなんだ。平らな陸屋根が地上人の登れる屋上になってる場合、もちろん登っちゃならないけど、人がいたらあんまり見ないほうがいい」 「かっこよくなるため?」 「そうだ。屋根族はかっこよくなきゃな。よそ見なんかしてたら格好悪いことに……」  付和彦に目を向ける帝太は、道路側へ落ちていく。 「テイちゃん!」  幼子の心配に対し、兄貴分はほくそ笑む。  ブロック塀の上に降り、細い足場を側転で進んだ。 「屋根以外でも乗っていい場所がある。道義上、長居はできないけどね」  今度は街路樹へ跳び、両足で幹を押してしならせた。反動で宙に舞うと、そこにはきっちりとハイウィンが待ち構えている。 「どうだ、フワっち。屋根族、最高だろ?」 「うん最高、テイちゃんもサイコ!」  帝太はハイウィンに捕まったまま一度、電柱を蹴り、さらに浮上する。電線に気を使うことは常に怠らない。  二階の屋根に不時着した。  ここから空中回転技を披露してやる、と意気込んだが、予期せぬ人物がいてバランスを崩した。トタン屋根の山折り部分に膝頭をぶつける。 「ぬおっ、これ、痛えんだよ」  屋根族あるあるだ。 「あんた、そんな未熟で教える側?」 「誰のせいだよ。って、なんでいんだ?」  女が同じ二階の屋根に立っている。
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