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教える立場の緊張が消え、楽しく高揚していく。
「マナーもある。窓が遠くにあろうと覗いちゃいけないぞ。俺たちの視力は双眼鏡並みなんだ。平らな陸屋根が地上人の登れる屋上になってる場合、もちろん登っちゃならないけど、人がいたらあんまり見ないほうがいい」
「かっこよくなるため?」
「そうだ。屋根族はかっこよくなきゃな。よそ見なんかしてたら格好悪いことに……」
付和彦に目を向ける帝太は、道路側へ落ちていく。
「テイちゃん!」
幼子の心配に対し、兄貴分はほくそ笑む。
ブロック塀の上に降り、細い足場を側転で進んだ。
「屋根以外でも乗っていい場所がある。道義上、長居はできないけどね」
今度は街路樹へ跳び、両足で幹を押してしならせた。反動で宙に舞うと、そこにはきっちりとハイウィンが待ち構えている。
「どうだ、フワっち。屋根族、最高だろ?」
「うん最高、テイちゃんもサイコ!」
帝太はハイウィンに捕まったまま一度、電柱を蹴り、さらに浮上する。電線に気を使うことは常に怠らない。
二階の屋根に不時着した。
ここから空中回転技を披露してやる、と意気込んだが、予期せぬ人物がいてバランスを崩した。トタン屋根の山折り部分に膝頭をぶつける。
「ぬおっ、これ、痛えんだよ」
屋根族あるあるだ。
「あんた、そんな未熟で教える側?」
「誰のせいだよ。って、なんでいんだ?」
女が同じ二階の屋根に立っている。
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