第一章 屋根族とは

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 舞華は帝太にもパンツを見せてきたのではない。隠していたナイフを抜いたのだ。  帝太は襲いかかってくる彼女に対し、後退しながら剣先を何度か躱す。屋根の縁ぎりぎりで舞華の凶暴な腕を捕まえた。 「舞華さん、あんた、いいかげんにしろ」 「ふざけてない。わたしは帝太を消す」 「いつまで夜条(よじょう)のとこにいるんだ?」  舞華の目つきがより鋭くなった。 「屋根王様と呼びなさい」  彼女の腕の力が増した。  帝太の胸襟は悲憤に占められ、押し返す力が減っていく。 「俺たち屋根族に王はいない。目を覚ませよ、舞華」 「小僧の分際で、呼び捨てにするな」  歳下の少年の背中が反り返る。帝太の尻目が、勝手口付近の苔に覆われた地面を捉えた。  舞華が本気で殺そうとするはずがない。地上に落とすつもりだ。下は柔らかそうなので、屋根族の強靭な肉体なら捻挫程度だが、屋根族としては死を意味する。 「舞華。俺と、俺と平気で、訣別かよ」 「はあ? あんたこそふざけないで。これ、あんたの口癖、死ね!」
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