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舞華は帝太にもパンツを見せてきたのではない。隠していたナイフを抜いたのだ。
帝太は襲いかかってくる彼女に対し、後退しながら剣先を何度か躱す。屋根の縁ぎりぎりで舞華の凶暴な腕を捕まえた。
「舞華さん、あんた、いいかげんにしろ」
「ふざけてない。わたしは帝太を消す」
「いつまで夜条のとこにいるんだ?」
舞華の目つきがより鋭くなった。
「屋根王様と呼びなさい」
彼女の腕の力が増した。
帝太の胸襟は悲憤に占められ、押し返す力が減っていく。
「俺たち屋根族に王はいない。目を覚ませよ、舞華」
「小僧の分際で、呼び捨てにするな」
歳下の少年の背中が反り返る。帝太の尻目が、勝手口付近の苔に覆われた地面を捉えた。
舞華が本気で殺そうとするはずがない。地上に落とすつもりだ。下は柔らかそうなので、屋根族の強靭な肉体なら捻挫程度だが、屋根族としては死を意味する。
「舞華。俺と、俺と平気で、訣別かよ」
「はあ? あんたこそふざけないで。これ、あんたの口癖、死ね!」
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