第一章 屋根族とは

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 オジロワシは相棒の命令に忠実だが、自発的に身を呈するなど小憎い機転を利かしもする。舞華は馴染みなので、今は男女がいちゃついているようにしか見えないだろう。  ハイウィンは嘴で暢気に羽根を繕っている。 「お姉ちゃん、テイちゃんをいじめないで」  付和彦が幼子として正しい反応を示した。  舞華は微笑で、横長の目を弟に向ける。 「フワちゃん、すぐに終わるから黙っていて。あなたはわたしと一緒に行くのよ」  付和彦が目玉を寄せ、唇を尖らせた。 「困惑するよな、フワっち」 「うるさい。屋根族は大きく動きだしているのよ。でもあんたみたいなガキは新世界に入れないわ」 「何言ってんかわかんねえって。夜条の奴め、全部あいつのせいだ」 「屋根王様に対して無礼な小僧」  帝太は角笛の紐を切られ、掌で額を押される。  温かい、と思う場違いな自分がいた。  帝太は踏んばれず膝が折れて、重心が後ろにずれ、軒下へ落下していく。  直近でこんな危機が連鎖しないよう、気をつけていたのに。今回は自らの脱力だった。  屋根族としての死。
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