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地上の男子は目を輝かせ、忠告をそっちのけにする。
「やっぱり屋根族の子なんだね。屋根狼がほんとに出現したんで、だったら屋根族もいるってさ、現実だ、すごい」
「なんにもすごくねえ。法律でも屋根族と接するのは例外を除いて禁止されてんだぞ。とっとと帰れ」
目の輝きを消さない地上人の男子が道路を見渡す。
「法律なんて知らないけど、今、誰も見てないし、堅いこと言わないでよ。屋根の上ってどんな世界なの? 僕、知りたいんだよ」
二階の屋根にいて見下ろす帝太は、足元より遥か下にいる男子が幼子に感じ、不必要に言葉を返してしまう。
「自分の家に屋根ないのか?」
「僕んち、平屋だもん。屋根に登ったことなんてないよ」
「知らね。丘の上から勝手に観察しろ。屋根は腐るほどある。学校の屋上のほうが早いか」
地上の男子は、かぶりをふるのも大仰だ。
「例えばだよ。マラソン大会だと、道路が普段と別の意味を持つでしょ。僕はただの屋根じゃなくて、君たちの住む屋根が知りたいんだ」
帝太は男子の身勝手な関心が、本当に気に障った。
「教えねえ」
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