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帝太は軒下で、仲のいい姉弟の話を聞く。
「フワちゃん、さあ行くわよ」
「テイちゃん大丈夫?」
「気にしないの」
「テイちゃんと遊ぶ日だよ」
「お姉ちゃん嫌い?」
「好き。テイちゃんも好き」
「お姉ちゃん大嫌い?」
「大好き!」
「じゃあ行きましょ」
「でもテイちゃんが」
「お姉ちゃんにムギュムギュされたくない?」
「ムギュムギュされたい!」
会話が二羽のオジロワシの羽ばたく音とともに遠ざかる。
地上に落ちた屋根族は、その瞬間から地上人になる。法律と屋根神様の見張る目により、狩猟採集民をやめさせられる。屋根の上を捨てなければならない。未知なる文明社会で生涯を終える人生となる。
「俺、地上人に」
帝太はこれまでの生活を思い起こす。暑い日差し、冷たい風、激しい雨。どんなときでも、ひたすら狩猟採集を繰り返す日々だった。今後もずっと、それしかないはずだった。
「生きる以外の、目的」
道路がすぐ傍にある。
「あれは人間が歩くためにあるんだって。へえ、そうなんだ。俺、これから経験するよ。道路を進んでいくと、その先に何かがあるんだ。俺の知らない何かが」
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