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帝太お馴染みのデニムの群青ツナギ、その胸ポケットが震動した。スマートフォンをとりだし、メールを見る。
「母ちゃん、依頼が回ってきたから俺行くよ」
「パンになに挟む?」
「ハムだけでいい」
帝太は青果市場の屋根に設置したテントを出る。
朝日に背伸びをし、欠伸の口でハムサンドに齧りついた。
「テイちゃん、寝不足?」
待っていた声は愛高好だ。彼女は愛高家のテントの陰から顔を覗かせ、三歩で跳ねてきた。額が帝太の肩の高さほどで、とても小柄だ。
「朝っぱらの跳ね女」
「そんな言い方して」
好が立腹のふっくら頬で体を捻ると、舞華より遥かに大きな胸が揺れた。
彼女は吊り気味の二重瞼で黒目が大きく、鼻は猫のに似ている。唇は上下逆さのごとく口角が下がり、最後の二ミリほどは反っている。同い年なのに、第二次性徴前の顔に見える。
着ている赤いツナギは、帝太に合わせたデニムの生地だ。
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