第二章 狩猟採集

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 そんな愛高好が、両側頭部から柳の枝のように垂れる三つ編みを、両手で引っぱった。 「愛する好ちゃんに優しくなあい」と甲高い声で叱ってくる。  帝太は寝起きにはきついと、余裕でポーズを変えない好の猫の額に、軽く頭突きした。 「ストレートね、愛を感じたわ」  好はおでこを摩り、頬を綻ばせた。 「いや違う」 「知ってるわ。テイちゃんの照れ屋っぷりは」  帝太は呆れ、好の頬を掌で挟み、綻びを潰した。 「キスはまだ早いわよ」  言葉とは裏腹で目を瞑る女子を、首を捩って半回転させた。 「ほんと照れ屋さん、でもわたし、いいの」  屋根族は助けあうため、子孫の維持のため、集団で生活する。ただし同じ市町村内という意味だ。狩猟採集民は減りすぎても増えすぎてもいけない。存続には絶妙な個体数バランスが必要になる。
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