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交流しすぎないよう、全員が同じ屋根の上に寝泊りする習慣がなくなった。
そもそも大所帯でテントを張るにふさわしい大屋根が多くない。あってもテント設営の許可が下りるとは限らない。加え、屋根族だって個別の空間を確保したいと思う。
屋根族事情だ。
宇木本家は別の屋根を選び、愛高家は娘の要望に応えた。なにしろ帝太と好は——
「テイちゃんとわたしは許婚なんだもんねえ」と語尾が高い音色になった。
「親の口約束だ。古っ」
屋根族には少数民の風習が今もけっこう名残っている。
「もちろん両親よりわたしたちの愛が大切だわ。狩りをして愛を深めましょう」
帝太は彼女に聞こえないよう、空に向けて嘆息した。
「相手は二頭なんで誰か誘わないとなんね。狩りには連れてってもいい。好の腕は信用してる」
「でしょ、でしょ」
喜ぶ乙女が跳ねれば、締まったお尻が帝太の胸に届く。地上人でこんなに高く跳ねられる女はそういないだろう。屋根族の女だ。
「朝のデザート食べてからね」
好がテントに立てかけていた銛を口で咥え、屋根の縁まで走り、飛び降りた。
「慌てんなって」
嘆息を重ねる帝太は、ハムサンドを口内に押しこんでから降りた。足元が涼しくなり、浮遊感が体を登る。地上人なら背筋が凍るだろう。屋根族にとって垂直への変化は、ただの進路変更だ。
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