どこかの星

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この星の景色が暗くなってしまって、もうどれ程月日がたったのだろう。 相変わらず空は曇っている。 時折注がれる光を頼りに人々は生きている。 星の中心にある大きな樹から分けられる人々の命を救う「力」によって、そして人間の僅かな術と人間同士の協力で生き延びていた。 それでも日々空は汚れ、水は濁り、木々は枯れてゆく。 一体何時からこうなってしまったのだろうか。 一人の青年は言った。 「この星の主が眠ってしまっているからだよ。」 この星の主、「神」は大きな樹の中で眠り続けている。 それは、どこかの星の何者かがこの星にむかって放った「力」のせいだと言う。 「私達が今目にしている景色は、主が閉じ込められてしまった世界の景色だ。」 遥かに大きな樹を見上げながら少女がたずねる。 「もう、起きないの?」 「起きれないのさ。」 青年は困った顔で答えた。 「私達もどうにかして助けたいんだが…。」 集まっていた人々が静かにうつむく。 少女が何気なく樹に耳を近づけた。 「ねぇ、何か聴こえるよ?」 「えっ!?」 驚いて青年は樹に耳をあてた。 すると、命を支えてくれている主の眠るその樹から、確かに声がしているのだ。 だが、主の声ではない。 誰の声かはわからないが、はっきりとこう言ったのだ。 『悪夢はもうすぐ終わる』と。 数日後。 主の眠る樹が突然明るく輝き、その姿が現れた。 ゆっくりと主が目を覚ますと、そこには美しい青空と、心地よい風。そして綺麗な水と緑が一瞬で広がり、光が降り注いだ。 まるで、今までの景色が嘘のように。 人々は声をあげて喜んだ。 目覚めた星の神は喜びあう人間達に問うた。 『私が眠っている間、この星はどんな景色だった?』 人々は辛い表情で答えた。 「酷く悲しい景色だった。」と。 「心がとても痛む日々だった。」と。 「誰もが苦しく泣いていた。」と。 星の神はうつむき、目を閉じた。 『…争いはなかったか?』 神はたずねた。 すると日々は、 「争うことは失うことだ。」 「誰一人として、心は失ってはならない。」 そう、力強く答えた。 それがこの星の願いであり、想いだ。 星の神は安心し、 『ありがとう。』 と、優しく微笑んだ。
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