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錫匁はバーナーからの火炎を、辺り一帯にめちゃくちゃに振り回した。視界がたちまち真っ赤に染まる。光と補色残像で目がチカチカした。
「君が好きだ」
「大好きよ、先生」
「君が好きなんだ」
「一番美味しいところは、脳味噌はね、先生にあげるから」
「君が好きなんだ」
「だから、先生が食べてね」
「君が好きなんだ」
僕の叫びは、声が掠れてほとんど音になっていなかった。
籠から飛び立つ小鳥のように、錫匁は炎の中へ飛び込んだ。
その瞬間の彼女は、今まで見た中で一番、生々しい生を感じさせた。
断末魔は笑い声のようだった。
錫匁、錫匁、錫匁……。
君は正しかった。
僕は一生、君を忘れることはないだろう。
錫匁、錫匁……。
「君が好きなんだ」
僕の視界が、白い光で埋め尽くされる。
僕の意識はそこで途切れた。
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