ー忘れたい、キス

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 広い屋敷のなかは、迷路みたいだ。  こんな豪邸テレビの中でしか見たことねぇよ。  すむ世界が違いすぎる。  智哉も、こちら寄りなんだろうか。  智哉は普通のサラリーマン家庭だといっていたけど。  立ち居振舞いは、丁寧でお坊っちゃん的なそれだった。  色々と厳しく育てられたのかもしれない。 「夕紀・・・さん・・・?」  すっかり失念していた。  ここが、誰の家か。  社長は、実家住まいだと噂を聞いたことがあることを。 「あ・・・」  社長、と言いかけて止まった。  俺が社長と知っているのは自分が働いてるからだ。  そうじゃない女の俺が知っていても、別に変ではないのだろうが下手なことを言いたくはない。
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