ー忘れたい、キス

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 男が男にキスされたくらいで。  ガキののりで友達同士でするくらいのもんだ。  俺は男だし。  か弱い女じゃないし。  ただ、今がか弱い女の格好なだけで。  はいてきた少し低めだけど普段履かない俺にしてはずいぶんと高く思えるヒールの靴を履き、智哉のそばをすり抜けて玄関を抜けた。  智哉が俺の名を呼んだ気がしたけど、止まれなかった。  途中、何度も転んだ。  慣れないヒールで走ったせいで靴擦れて痛かった。  膝も擦りむいたし、結局涙は我慢できなかった。 「夕紀ちゃん!? どうしたの、それ!」  俺が向かっていたのは、マキさんのところだった。  こんな格好で行けるところなんてそこしか思い付かなかった。
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