ー忘れたい、キス

18/28
前へ
/288ページ
次へ
 ボロボロだ。  自分でもわかる。  男のくせに、あれくらいのことでこんなになって。  もうやだ。  こんな格好してるからだ。  だから心まで弱くなって、女みたくなって。 「マキさんー」 「えぇぇ、どうしたのよぉ、夕紀ちゃぁん」  泣きついた俺に、マキさんは困り顔で抱き締めてくれた。  よしよしと、子供をあやすみたいに。  怪我の手当てもしてくれて、とても甘やかしてくれたんだ。 「ーーうん。今、うちの店にいるわ。少し落ち着いたみたいだけど・・・。うん。わかった」  扉の向こう側。  たぶん、智哉と電話してる。  はぁ。俺、なにしてんだろ。  頭ん中ごちゃごちゃになって。  こんなときに起こす行動さえ女みたいに女々しくて。
/288ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1152人が本棚に入れています
本棚に追加