ー忘れたい、キス

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「夕紀ちゃんの今の状態は、大丈夫って言わないの。あたしには言いづらくてもいいから、智哉にはちゃんと話なさい」 「・・・・・・」  智哉にこそ、話せるはずがない。  だって、社長は智哉の親戚で。  そんな人のこと、悪く言われるのは嫌だろう。  でも、マキさんはそれ以上譲ってくれる気はないらしく、これのんで落ち着きなさい、と暖かいココアをくれた。 「すまない、遅くなった」 「智哉! もう! 遅いじゃない」  智哉が来たのは、それから一時間程たってからだった。  その間、マキさんは仕事をしながら俺の様子を度々見に来てくれた。  俺も、時間がたてば落ち着きを取り戻しつつあった。  取り乱しすぎた、と反省するくらいには。 「夕紀、大丈夫か?」 「・・・・・・別に、平気だってマキさんにも言った」 「もう、夕紀ちゃん!」  相変わらずな俺に、マキさんはプリプリ怒りながらも少しあきれたように息を吐いた。
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