ーキミガスキ

5/19
前へ
/288ページ
次へ
「俊之さん、そんな風に土下座されると夕紀も怒りたくても怒れないでしょう」 「あ、そ、そうだな・・・」  智哉に指摘され、俊之さんはそこでようやく頭をあげ立ち上がった。  ほっとする。いつまでも土下座されたままはものすごく居心地が悪かったから。 「今回のことは、私もちゃんと智哉さんとお付き合いさせてもらっていることや、お気持ちに答えられないことをお伝えできていなかったので、その点は申し訳なかったです」 「そ、そんな・・・。言いづらい雰囲気にさせてしまっていたのでしょうし」  そうだ。なんて言えないから、微笑みを返す。 「されたことを、簡単に許すことはできません。無理矢理していいことではないと思います」 「はい」 「ですが、今回のことは水に流すつもりです。訴えたりするつもりはありません」 「え、それは、本当ですか? 」 「はい。ですが、俊之さんがしたことは、決して許されることではないことは理解してほしいです。この先、誰か他のかたを好きになったときには、ちゃんと紳士に向き合ってもらえることを願ってます」 「・・・はい。その相手は、あなたではないのですね」
/288ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1152人が本棚に入れています
本棚に追加