ーキミガスキ

6/19
前へ
/288ページ
次へ
 何で社長は、俺なんか好きになったんだろう。  見た目には女に見えるかもしれないけど、そもそも社長とは顔を会わせた程度だった。  最初は躓いたところを助けってもらっただけ。すぐに別れたし。  何が、そんなに引っ掛かったんだろう。 「あなたみたいな素敵な人に、もう出会えないと思ったんです。だから、焦ってしまった・・・。そんな私には、智哉の恋人でなかったとしても、あなたが私を好きになってくださることはないんでしょうね」 「・・・・・・私は智哉のことが好きなので、恋人でなかったときのことはわかりません。ですが、そうですね。思いやりの持てるかたがいいと思うので」  そんなことありません。何て気休めは言ってはいけないと思った。  ここで厳しく言っておかないとダメだろうと。  自分がいい人でありたいために、社長のなかに未練が残るようなことはしたくなかった。  社長のためにも。自分自身のためにも。
/288ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1152人が本棚に入れています
本棚に追加