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案内された席には、すでに年配の白髪のおじいさんが待っていた。
可愛らしいおじいちゃんを想像していたが、そういえばこの男の血縁者でもあるのだったと納得するくらいには厳格そうな怖そうなおじいさんだった。
「お待たせしてすみません」
「いや。ワシも今来たところだ」
丁寧に挨拶を交わし、男、智哉が席につく。
俺もできるだけ女っぽく丁寧にお辞儀をするとそのとなりに座った。
「この人が、智哉のいっていたお嬢さんかね」
「ええ。早乙女夕紀さんです」
ちょおおいい!
そうだ!
偽名にしてもらえばよかった!
ここは俺の職場で、俺の名前が出れば、注目される。
連想ゲームの原理で気づかれる可能性が・・・。ってもうすでに遅かった。
はっきりと、紹介されてしまった。
まぁ、同姓同名ってことで誤魔化されるだろう。
誤魔化されてくれよ。
ちらりとフロアを見渡すが、近くには誰もおらず、少し離れた席の片付けを前川がしていた。
ホッと肩を落とす。
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