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「俺の心配よりも、他にも心配することがあるでしょうに」
「息子のことはもうとうに諦めとる。あれも、俺の言うことを聞く奴じゃないしな。俺にはお前だけだ、智哉。お前はいつだってワシのためにと動いてくれる、優しい子だからね」
厳しそうに見えるけれど、孫思いの優しいおじいさんって感じだ。
こいつも、俺にたいしては辛辣だけど、おじいさんに対しては優しい孫なのかな。
全く想像つかないけど!
「結婚は考えているのか?」
「けっ!?」
「よしてください。これからゆっくり距離を縮めて、ちゃんと将来を考えるつもりです。焦って夕紀さんに逃げられたらどうしてくれるんですか」
「はははっ。なんだ、逃げられたくないくらいにはちゃんと思っているということか。そうか。智哉にもそんな人ができたか!」
おじいさんの言葉に、なんの躊躇いもなくスラッと返す。
おじいさんはとても嬉しそうに笑っている。
なんか、こんなに喜ばれて胸が痛む。
俺は、偽物でしかないのに。むしろ女でもないし。
もし、俺が女だとしたら、これをきっかけに本当の恋人に昇進することもあったのかもしれない。
そうすれば、結果的におじいさんだって喜ぶだろうし。
でも、俺は男だ。それは絶対にない。
やだな。なんで俺が罪悪感を感じなくちゃいけないんだ。
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