ー過ぎ去りし日

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「見つけた」 「・・・あ? 誰、あんた」  サボるときに使っていた校舎の裏。木が生い茂って校舎の二階から見下ろしても見つからない場所。しかも、移動教室の多い第二棟の教室側であるため、滅多に人も来ないし穴場と言える場所だった。  でも、その日突然頭上から声をかけられたのだった。  智哉の頭上にある一階の窓から一人の女性がいたずらな笑顔を浮かべながら声をかけた。 「四月からあなたのクラスの副担になった添島三葉よ。よろしくね」 「は? 副担? へぇー」  あまり、興味はなかった。自分とそれほど変わらないような幼く見える彼女。制服を着崩し、口調も乱暴な智哉にも物怖じせず向かってくる、そんな姿には少しだけ驚かされたが。  その日から、彼女は毎日のように智哉の居場所を突き止めては、教室に戻るように、制服を正しく着るようにと指導するようになった。それは、副担としての仕事のためなのだろうが、これまでの担任も副担も、どこか放任で口うるさく言う訳ではなかったから、新鮮だった。
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