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「なんで今さら・・・」
「祖父がまたお前に会いたいと言って聞かない」
「あんたって、本当におじいさんに頭上がんないんだな」
「うるさい」
不機嫌そうな声。
本当のことじゃないか。
だったら、もう会わせることはできない! って一蹴してみろよ。
「マキにはもう頼んである」
「用意周到かよ」
マキさんか・・・。
あの女口調の、フルネームは牧野賢というらしい。
押しの強い濃い目の女口調がちょっと苦手だ。悪い人じゃなさそうだけど。
というか、ああいう人と仲がいいっていうのが不思議でならないんだけど。
「でも、ずっとそれに付き合わないといけないの?」
「別人に変えることはできない」
「それはそうだけどさ」
「祖父が亡くなれば、女装する必要はなくなるがな」
「ちょ、そんなの・・・」
複雑すぎる。
そんなの、なんか待ちたくないし。
一度しかあったことない人だけど、長生きしてほしい。
遺される辛さは一番わかってるし、遺す辛さもそばで見ていたからわかってるつもりだ。
だから、できるなら長生きしてほしい。
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