ー過ぎ去りし日

5/8
前へ
/288ページ
次へ
「九条くん、私は・・・」 「俺のこと、わかってくれたの三葉だけだ。俺をこうやって立ち直らせてくれたのは三葉だ」 「それは、私が教師であなたが私が受け持つクラスの生徒だからよ」 「それでも。俺には三葉が必要だった。女性として、三葉のことが好きなんだ」  どうにか、伝わってほしいと思った。恋愛なんてしたことがなかった。これが、初恋の智哉にとってただ思いを貫き通すことだけがすべてだった。 「九条くん。気持ちは嬉しいわ。でも、私にとってあなたは生徒なの。あなたは手のかかる生徒で、心配で色々と手を焼いてきたわ。それは、教師としてやってきたことよ。それで勘違いさせてしまったのならごめんなさい。私は教師なの。その立場を違えることはできない。ごめんなさい」 「教師としてじゃなくて、三葉として俺を見てくれよ!」  教師としてなんて、見れなかった。だから、彼女にもそういうのを取っ払ってみてほしかった。でも、彼女は首を横に振る。確固たる意思を感じた。  智哉は受け入れられなかった。受け入れたくなかった。その思いで強引に腕を引きその体を抱きしめたのだ。
/288ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1153人が本棚に入れています
本棚に追加