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「九条くん・・・っ!」
「好きなんだよ、三葉。なんでわかってくれないんだ」
思いが通じあわないことなんて当たり前のようにある。そこには人の心が作用するのだから。でも、その時の智哉にはそんなことが考えられなかった。それくらい彼女のことが好きで、たまらなく自分のものにしたい。それ以外考えられないほどに。
「ーーーえ、」
ガララと戸のあく音にハッとしたのは、入ってきた生徒が声をあげたときだった。慌てたように体を離したが、時はすでに遅くクラスメイトにその場面はしっかりと見られたあとだった。
戸惑ったように視線を反らされ、慌てたように飛び出していったクラスメイトに、今のは違うのだと訂正などできる時間はなかった。
そこで、彼女とも曖昧なままで別れることになった。明日、クラスメイトには説明しておくと約束はして。でも、それでは遅かったのだ。
次の日、朝早くに学校にいき、昨日のクラスメイトを待って朝イチで訂正するつもりだった。
でも、ちらほらと登校してくる生徒の様子がおかしい。自分への視線が、いつもと違って見えた。すでに、噂は回っているのだと確信した。メールやらですでに話は回ってしまっていたのだ。あのときすぐに追いかけて訂正するべきだったのだと痛感した。
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