ー過ぎ去りし日

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 智哉の卒業式を楽しみにしていた。智哉も、その姿を見せることを目標に頑張っていた。そのはずだったのに、どこで間違ってしまったのか。抱きしめなければよかった。告白なんてしなければよかった。好きになんてならなければよかった。  自分が、考えなしで自分勝手なせいで、教師として奮闘していた彼女の居場所を奪ってしまった。その事は智哉の心を酷く傷つけ、重い十字架を背負わせるには十分すぎた。  そこで自分が自棄になって、また荒んでしまうのはこれまで懸命に向き合ってくれた彼女を酷く裏切る行為だと自分を奮い立たせ、謹慎処分を受けていた智哉が謹慎があけてから、懸命に高校生活を乗りきり、無事に卒業の日を迎えることができた。  そこに、彼女の姿がないことが酷く悲しい。それは自分が引き起こしてしまったことによる結果なのだから、悔しくて仕方がない。  酷く苦しい、それが初恋の思い出だった。
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