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「でも・・・、なぜか夕紀に出会って、一緒にいるうちにあの時の純粋に人を好きになったあの気持ちを思い出した。毎日が楽しくて、会えるのが嬉しくて。自分を繕わなくてもいられる、その心地よさに、久しぶりに恋というものをした」
「・・・」
「嬉しかったんだ。また人を好きになれたことが。あんなに怖かったのに、夕紀には怖じ気づかずに思いを告げることができた。夕紀への思いは溢れる一方だった」
愛おしそうな瞳を向けられて、胸が騒ぐ。愛されてる。それが実感できる視線だった。
「添島先生に再会して、動揺したのは事実だ。でも、それは、自分が傷つけてしまった彼女が、俺を恨んでいるんじゃないかとずっと怖かったから。でも、幸せそうな彼女を見て、すごくホッとしたんだ」
「・・・智哉」
「クリスマスの日、会ったときに当時のことを謝った。そして、許してもらえたんだ。そもそも俺を責めたりなんかしていないと。結果的に、転勤した先で今のご主人と出会ったのだから、感謝こそするなんてことも言われた。そして、気持ちに答えられなくてごめんなさいと。うまく導いてあげられなくてごめんと、逆に謝られてしまった」
「そっか」
「もう、彼女にそういった感情を抱いてはいない。他の女にだって。俺は今だって夕紀のことが好きだよ。一番だ。これから先も、ずっとそうだって言える」
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