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「・・・早く、本命の彼女でも見つけてよ。それが一番の近道だろ」
「まあ、そうだろうが、それが一番可能性が低いな」
「なんでだよ。頑張れよ、そこは」
こんな、他人を偽物として用意するなんかよりずっとおじいさんだって喜ぶだろうに。
おじいさんのこと、ちゃんと大切に思ってるらしいのに。
そして、結局俺は女装するはめになってまた、同じように智哉とならんでおじいさんの前に座っていた。
今回は綺麗目なワンピースを着ている。智哉は相変わらずのスーツ姿だ。
可愛すぎるのは嫌だと駄々をこねて、色は水色であまりフワッとしていないタイプのものだ。
マキさんが文句をいいながらも選んでくれた。
「夕紀さんだったね! いやあ! また会えて嬉しいよ」
「は、はい。私もです。お久しぶりです」
こんなに歓迎されれば悪い気はしないけれど。
騙しているんだという罪悪感は消えない。
でも、こんなにも喜んでくれるのなら、智哉の言う通り最後までこの嘘を貫き通してあげるのがいいのかもしれないとも思ってしまうからダメだ。
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