ーそして今

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 お互いに冷静になって、落ち着いて話ができるようになって俺が俊之さんにすべて話してしまったことを詫びると話がそこへと変わった。  でも、あの人、先生は智哉を突き放したりはしなかったんだろう。聞いた話では、離れたのはクラスメイトが入ってきたからで。断った理由だって、智哉のことが好きじゃないではなくて、教師としてその立場を違えることはできないって、それは、そうやって自分に言い聞かせているように思えた。それはきっと第三者だから何となく感じたことだろう。  智哉がありのままを話してくれて、それを端から聞いて感じられること。  先生は、智哉のこと少なからず好きだったんじゃないかな。それはどれ程の大きさなのかはわからない。俺が智哉を思っているほどの熱量はなかったかもしれない。それでも。特別な存在だったんじゃないのかな。  先生が、二人に疚しい関係がないことをはっきりと明言して、その上で自分の責任だと証言したのだって、必要以上に智哉の処分が重くならないようにという配慮にも思える。それが事実なのだから、事実をいっただけともとれるけど。  先生は、智哉のこと大切に思ってたんじゃないのかな。  でも、俺はそれを智哉には言わなかった。言いたくなかった。それを言って、智哉が先生に何を思うのかが不安だったから。あんな風にずっと好きだって言われたくせにそう思うなんて、って感じだけど。  信じてないわけじゃないんだ。
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