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「おじいさん、こんにちは。早乙女夕紀です」
「はっ、夕紀!? どういうことだ。男みたいな・・・」
「はい。俺は、男です」
そう。俺は、女装ではなくいつもの自分の姿のままやって来た。おじいさんに正直に話すために。
あの日智哉にその事を提案すると、少し考えたあとそろそろ潮時だなと智哉も納得してくれた。もとはといえば、おじいさんが余命幾ばくもないときいたから始まったこの契約。
それが嘘だとわかった今、これ以上偽ったままでいるわけにはいかない。それに、おじいさんには本当のことを話して理解してもらいたい。そう思った。
だから今日は、俺が本当は男であることを告げると共に、智哉との関係も話すつもりだ。
理解されなかったらどうしよう。拒絶されることもあるかもしれない。俺だけならいいけど、智哉までそうなったら。そう考えると怖いけど、自分から言い出したくせに怖じ気づいた俺に智哉が優しく笑うから、頑張ろうと思えた。
「ずっと、騙していてごめんなさい。俺は男で、ずっと女装しておじいさんを騙してました」
「夕紀が悪いんじゃない。始まりは俺が頼んだんです。おじいさんが余命幾ばくもないと聞かされ、嘘でもいいから幸せな姿を見せたいと、そう思って」
「なっ、じゃ、じゃあ、智哉の恋人だという話は・・・」
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