1153人が本棚に入れています
本棚に追加
「そ、そんな、男だなんて・・・」
「お父さん。夕紀さんの人柄はお父さんがよくわかっているんじゃないですか」
「俊之・・・。お前も知っていたのか」
「私が知ったのは最近ですよ。お父さん、あなたこそ二人を騙していたではないですか」
「騙していただと?」
「余命幾ばくもないとはどういうことですか?」
「うっ」
俊之さんの指摘におじいさんは言葉を詰まらせた。
気まずげな表情。本当に嘘だったんだ。ここで改めてほっとする。
「その事を夕紀さんに話したら、どうだったと思いますか?」
「ど、どうとは」
「泣いたんですよ。彼は。騙されていたというのに、お父さんが病気じゃなくてよかったと」
その言葉を聞いて、おじいさんが俺を見る。何となく気恥ずかしくてうつむいた。
「俺、おじいさんのこと好きです。うち、母子家庭で、その父を亡くしてて。父だけじゃなくて祖父母もどっちももういないから。おじいちゃんってこういう感じかなって、なんか楽しくて・・・。あ、勝手にそんな風に思ってすみません。でも、だから、すごく楽しかったんです」
「夕紀・・・・・・」
「だから、これからも、そういう関係が続けば言いなって思ったんです。図々しくてすみません」
最初のコメントを投稿しよう!