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「智哉の顔色を窺ってるのか? そんなにおっかないかね?」
「えっ、い、いえ」
「智哉と食べても味気がないだろう? 旨いとも不味いともいいやしない。その点夕紀はいい。そんな風に美味しそうに食べてくれるなら、連れてきた甲斐があるってものだ」
心底嬉しそうなおじいさんに、少し恥ずかしくなる。
思いきりがっついたところを見られたんだ。
それが嬉しいっていってくれたのは助かったけれど。
普段高級なものを食べなれていないのがバレバレだ。
失敗したな、と思う。
「そんなことないです。私はつい、美味しいものを食べると思いきり顔に出るというか。逆に分かりやすいだけなんだと思います」
「そうか」
「はい。あの、智哉も不味いとかそんな風には思ってないと思うんです。本当のところはどうかわかりませんけど。さっきから箸は進んでいるし、表情も穏やかで・・・。その、嘘のつけない人だと思うので」
嫌なことは嫌だとはっきり言うタイプ。
おじいさんには頭が上がらないようだけど、でもちゃんと断りははっきり入れているようだし。
それでも断りきれないのは、おじいさんがそれよりも上手で、おじいさんの思いに少しでも応えたいっていう優しさがあるからだと思う。
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