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「夕紀は残していきますので、ゆっくりお過ごしください」
「そうか。なら、いい。さっさと仕事にでもいきなさい」
「はは。すっかり気に入られたみたいですね。孫の俺より夕紀ですか」
「当たり前だろう。むさ苦しい男より、可憐なお嬢さんの方がいいに決まっておる」
「なら問題なさそうですね。ではすみません。失礼します」
二人だけでさっさと決まっていく。
ちょっと待て。俺を一人でおいていく気か?
バレたらどうする。
誰がフォローしてくれるんだよ。
「じゃあ、夕紀。失礼のないように」
「えっ、ちょ、ちょっと智哉・・・」
にこり。じゃないっつーの!
こんなときばっかりそんな優しげな笑顔向けんじゃねぇよ!
薄情者!
なんてことは言えず、去っていく背中を切なく見つめるしかできなかった。
「さ、薄情な男は放っておいてたんとお食べ」
「は、はい」
残された俺は、逃げ出すこともできずこの時間をどうにか乗りきるしかない。
でも、せっかくの料理無駄にすることにならなくてよかった。
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