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「あの、おじいさん。やっぱり」
「この間初めて会ったホテルを覚えているかい?」
「え? あ、はい」
俺が働いているホテルだ。
きっと俺は青ざめた顔をしているに違いない。
「そこに部屋をとっているんだ。一月に一度三日ほどあのホテルに泊まっているんだがね、今がその最中で。悪いがそこまで送ってもらってもいいかな?」
「それは、もちろん。でも、本当に病院にはいかなくて平気なんですか?」
「大丈夫。ほんとうに、少しクラっとした程度だから心配しなくていいよ」
おじいさんがそう言うのならそうなのかな。
不安な気持ちが拭えず焦る気持ちでいる俺だけど、確かに少し座ってじっとしていると顔色は戻ったようだ。
おじいさんに言われたように、タクシーを呼びホテルに向かった。
手を貸し、歩くのを支えながらホテルの一室に送り届けた。
それは最上階のVIPルームと言われる部屋だった。
こんな部屋に一月に何泊も泊まれるなんて、すごい人なんだなぁ。
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