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そんなことを考えながら鞄からスマホを取りだし、相変わらず慣れないヒールに戸惑いながら足早にその場を立ち去ろうと歩いた。
だって、もし誰かに会うとまずい。
いや。会わないわけがない。
女装してしかも一人でいる姿なんて、変態でしかない。
一気に最悪な噂が飛び交うに違いない。
「わっ!?」
焦っていたのかもしれない。
智哉にも連絡しなきゃと気持ちが急いて。
慣れないヒールに足がもつれつんのめるように倒れそうになった。
がし、と誰かの逞しい腕が俺の体を抱き止める。
そういえば、誰かが廊下の反対側から歩いてきていたような気がする。
気がする程度で、本当に焦っていて把握できていなかった。
「す、すみませーーー」
しっかりと抱き止められた身体。
盛大に転ばずにすんでホッとし、顔をあげると思いの外近い距離に相手の顔があった。
そして、一気に現実に引き戻された。
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