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「これでタクシーを呼んで病院に行け。後のことは電話で対応する」
「は、はい」
「それからお前は、俺と一緒に来い」
「え、病院にいくなら付き添いが」
「必要ない。一人で行けるだろ」
突き放すような言い方。
なんだよそれ。女の人一人で病院にいかせるなんて。しかも足がいたいっていう人間を。
お前は悪魔か。
「俺は時間がない。急げ」
「は!? 俺には仕事だってある!」
「お前のせいでこっちは迷惑してるんだ」
ぐ、と息が詰まる。
それを言われてしまうとなにも言えない。
女の人にぶつかったのは自分の失態なのは抗いようのない事実だ。
それで、この男に迷惑がかかると言うならそれは、俺が誠意をもって謝罪するべきであって。
「ついて来い」
「ついてって、ちょっとおい!」
男はそう言って歩き出す。
片手にスマホを取り出し誰かに連絡しながら、俺が逃げ出さないように振り返ることも忘れずに。
ああもう。
本当に今日は厄日に違いない。
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