ー男にモテても嬉しくなんて、ありません

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 自分の職場でもあるここで会うのは色々とまずい。  自分の心情的にも。  ばれてしまうことはどうしても避けたいのだ。  だからこそ、この場でこの格好はいっそう気合いが入る。  でも、おじいさんは本当にこのホテルが好きなんだろう。  こうして今日会う約束をここに選ぶくらいには。  こういう用をきっかけに様子を見に来ているのかもしれない。  抜き打ちテストみたいで、従業員としてはハラハラもんだろうけど。  俺が入ったときにはおじいさんはもう引退したあとだったから、俺はおじいさんのことを知らなかった。  けど、知っている人からするとおじいさんがこうして利用することはかなりヒヤヒヤすることは間違いない。 「本当に、よく撮れているんだ。三人で撮った写真も大切にさせてもらうよ」 「喜んでもらえてよかったです。とても緊張したので、緊張した甲斐がありました」 「そうか。夕紀は本当に智哉と結婚する気は、まだないのかね?」 「え・・・」 「ワシは本当に夕紀を気に入っている。智哉の相手は君しかいないとすら思っているくらいだ。今すぐにでも籍を入れてほしい」 「おじいさん」
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