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「じゃあ、おじいさん。また」
「ああ。今日はありがとう。次の機会を楽しみにしているよ」
ホテルを見回るというおじいさんとその場で別れ、俺は階段を降りていく。
低めのヒールを貸してもらったが、ヒールで歩くのにも少し慣れたな。
なれた自分に、なんだかガックシしながらもさっさと着替えてしまおうと足を早めた。
「あの!」
階段を降りたところで声がした。
自分が誰かに呼び止められることなんてないと思っていたから自分のことと思わず歩き続けていた。
「あの! 待ってください」
ぐいと腕を後ろに引かれ、自分が呼ばれていたのだとようやく気づいた。
どんだけボーッとしていたんだ俺は。
「え、あ、はい」
自分が女の姿なのを思い出して少し高めにした声。
振り向いて、自分を呼び止めた人物を見てぎょっとした。
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