ー忘れたい、キス

4/28
前へ
/288ページ
次へ
 男同士で。  それに、智哉は結婚しないって言ってた。  それって、そもそも恋愛をするつもりがないってことじゃないのか? 「智哉は、男同士とかそういう偏見はないわよ? 私と友達してるくらいだもの。安心して」 「それは、そうかもしれないけど」 「あたし、二人お似合いだと思うのよ。あ、リップつけるからじっとしててね」  言われるままじっとする。  マキさんの顔が近づくのにも、最近慣れた。  他人がそうであることに偏見がないのと、自分がそういう思いを向けられて不快に思うかどうかって一緒なのかな。自分に害がなければいい、って言うのもきっとあるだろうし。  そう考えたら、やっぱり大っぴらに好きだとは言いづらい。 「智哉も、夕紀ちゃんにたいしては素で話せているみたいだし、けっこう心を許してると思うの。慣れたら結構可愛いところもあるんだけどね、人付き合いが苦手と言うか、そういうところがあるから。初対面ではキツく見られがちなのよね」  それはわかる気がする。  俺自身も、智哉の第一印象は悪かった。  状況も状況だったからだろうけど。  強引だったし、人の話聞かないし、なんて最低な奴だと思った。
/288ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1152人が本棚に入れています
本棚に追加