最果ての白

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 呟くと彼女は歌うように答えた。 「どこへ行こう?」 「どこへでも」  彼女は微笑んだ。 「このまま風に吹かれてたい」 「じゃあ、そうしましょう」  わたしたちは白い花の丘を登り続けた。  雲がわたしたちを通りすぎていった。 「ずいぶん登ったわ」 「浜辺がもうあんなに下」  白い砂浜に透明な波が打ち寄せるのを、わたしたちは並んで見下ろした。 「不思議ね。こんなに遠いのに、はっきり見える」 「わたしたちは見たいものを見るのよ」  囁いて彼女は微笑んだ。  わたしたちはさらに登った。  いくつもの雲がわたしたちを通りすぎていった。  やっと登り終わるとそこには巨木の森が広がっていた。  根っこのあいだを通り抜けてわたしたちは歩いた。  根の部分だけで教会くらいの高さがあった。  天辺はどれだけ高いのかわからない。  いくつもの巨木を通り抜けた。  幹の中が螺旋階段になっている樹もあった。  どこからか歌声が聞こえた。  風の音も歌っているようだった。  わたしはひとつの巨木の根元で足を止めた。 「ここよ」 「ここね」  彼女は微笑み、わたしたちは螺旋階段を登った。  何周も何周も登り続けた。  辿り着いた天辺は大きく開けていた。  三車線の道路くらいある枝の上を悪いた。     
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!