最果ての白

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 周りには雲ひとつない青空が広がっている。  歩いていくと枝はだんだん細くなって、わたしたちはひとつの葉っぱの上に座った。  葉っぱが風でゆらゆら揺れて、ゆりかごに乗っているかのようだった。  また歌が聞こえた。  優しくて、あたたかな歌声。  わたしたちは肩をくっつけあって目を閉じた。 「気持ちいいわ」 「気持ちいいわね」 「ずっとこうしてたい」 「そのうち歩きたくなるわ」 「そうかしら?」 「そのときまでこうしていましょう」 「そうね」  わたしは頷いて空を眺めた。  いつか自分の意志で歩きだすまでは、こうしていていいのだ。  そう思うとすごくホッとした。 「ねぇ。ずっと一緒にいてくれる?」 「わたしはいつでもわたしと一緒よ」  優しく彼女は微笑んだ。  ああ、そうだった。  彼女はわたし。わたしは彼女。  こうして一緒に澄んだ空を見上げたことを、どうか思い出せますように。  いつかふたたび目覚めたときも。
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