2 ブッチーニ刑事は、禁煙中で苦しんでいる

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「裏付けですって?」 「ああ。残念だが、殺しの手口に心当たりがあるんだ。俺の勘が正しければ、奴は二年前にも同じことをやっている。蒼い服を着た猫殺し……。その事件を知っているか?」  先輩刑事の指摘を受けて、若いヘイデン刑事にも思い当る節が出てきた。 「ざっと資料を読んだだけですけど。二年前に発生して、現在も未解決となっている連続殺害事件ですね。蒼い服を着た男猫に、移民出身の娼婦ばかりが襲われました。彼女らは流れ者で役所に戸籍登録もない者ばかりだった。だから、連続殺害という大事件であるにもかかわらず、署を上げての重要事件として取り扱えなかったそうですね。そう言えば、今夜の被害者も移民系の猫だ!」  ヘイデン刑事は得心して、両手をポンと打ち鳴らした。 「赤毛のウィッグを被っちゃいたが、彼女は東洋からの移民猫だ。間違いなく、あの糞野郎が舞い戻ってきたに違いない」 「当時の重要参考人として、ある男猫の名前が挙がっていましたね。しかし彼は……」 「わかったか。すぐさま事情聴取に行きたいが、相手が胸糞悪いことに特権階級だ。二年前もその壁に阻まれて、奥へ踏み込めなかった。そこへ乗り込んで行く前に、なるべくきちんと裏を取っておきたい」  リアム・ヘイデン刑事は、ハンチングの鍔をつまんで「了解」のサインを示した。落ち葉を踏む足音と共に、彼らの後ろ姿が闇に溶ける。初冬の王都の夜は冷え冷えとして、そして暗かった。
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