3 トニヤ・ジョッセルは、東洋猫の店主と相性が悪い

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 トニヤ・ジョッセルは、何度も大きなあくびをしながら、花市場近くにあるカトー食堂に陣取っていた。  現在の時刻は午前十時。すでに陽は高く昇っているが、トニヤの体内時計ではほとんど早朝の時間帯だ。おまけに昨夜は創作活動のため、夜が白むまでデッサンをしていた。トニヤは瞼の上下がくっつきそうになる目で、シャムの血が色濃く出ている少女猫を眺めていた。 「トニヤったら、聞いたわよ。最近上客をつかんだんだって?」  ダーオ・ブッチーニは、フォークでチップスとフィッシュ・フライを同時に突き刺した。そして皿の上に残ったソースを拭き取るように一巡させると、ソースでトロトロになった塊りを一気に口の中に放り込んだ。 「お相手は、大きなお屋敷の伯爵夫人だっ……てね。しゅごいじゃない」 「喋るか食うか、どちらかにしろよ。それに食い方が汚い」 「この食べ方は、この前パパもやっていたわ。娘だから似ていても当然よ」 「タウは、あの強面キャラクターだからいいんだ。今の食べ方は、とてもじゃないがレディじゃないな。店の親父に、呆れて文句を言われるぞ」  トニヤは椅子にもたれかかると、東洋からやって来た店主に「なあ」と同意を投げた。しかし黄色い毛並みの中年猫は、ほんの少し耳を動かしただけで、何の反応も返してこない。トニヤは眉間にしわを寄せた。 「あの野郎、聞こえているくせに知らないふりをしやがった。それとも言葉がわからないのかな」 「カトーは字が読めないけれど、言葉はペラペラよ。つれなくされた理由は、フィッシュ・フライが売りのこの店で、トニヤがコーヒーしか注文しないからよ」
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