3 トニヤ・ジョッセルは、東洋猫の店主と相性が悪い

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「実は、ロレダーノ伯爵夫人に、この手紙を渡してほしいの」 「手紙を? どういうことだ」 「伯爵夫人に、あたしのパトロンになってもらいたくて。来年になったら、あたしは十一歳になるわ。つまり将来を決めなきゃならないの」  ほほぅ、とトニヤは感心してみせた。 「そうだな。お前は年齢の割に背が高いから、メイド服が似合うかもな。王立の使用人養成学校にでも行くか? かなり授業料が高いが、卒業後はいいお屋敷で仕事ができる」 「違うの。あたしは進学したい。今よりも上の学校に行きたいの。でもね、今はパパの養女になって戸籍があるけれど、元々がシャムからの移民で母猫が娼婦だったとくれば、どこの学校も入れてくれないでしょう。おまけにパパは安月給だしね。私立寄宿学校(パブリック・スクール)なんて、経済的にも無理なのよ」 「私立寄宿学校だって……?」  トニヤは感嘆した表情で、ワックスで封印された手紙を眺め回した。 「手紙の中には、あたしの成績表も入っているわ。上に行ける点数は取っているはず。聞いたけれど、ロレダーノ伯爵夫人は平民出の苦労人なのでしょう。手紙の内容を読んでもらえれば、必ず後見人になってくれると思うの。伯爵家の後見が付けば、どんなきっちりとした学校でも入学させてくれるわ」 「油断も隙もないな。伯爵夫人の出身はタウに聞いたのか? この件、タウも承知なんだろうな?」 「もちろんよ」  ダーオはコクリとうなずいた。 「それで私立寄宿学校なんぞに行って、どうするつもりだ?」
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