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「なんてこった。捜査情報が筒抜けじゃないか」
トニヤは舌打ちをすると、観念したように額に手を当て、油で茶色に汚れた天井を見上げた。
「やはりそうね。パパがあたしを学校にも行かさず、トニヤに預けたのがその証拠よ。パパは、蒼い服の猫殺しからあたしを守りたいのね。ママが殺されたあの時、あたしはクローゼットの引き出しの中にいた。ママが客を取る時は、いつもそうしていたから。だから猫殺しに見つかることはなかった。その代わりに、犯人の姿や顔は見ていないけれど」
「それ見ろ。お前は事件に首を突っ込みたいようだが、最初からお手上げ状態じゃないか。十歳の子猫にできることなんかないぞ」
「いいえ、あるわ。だってあたしは、蒼い服の猫殺しの声を……。ママを殺した犯人が、あの恐ろしい呪文を唱えた声を、この耳で聞いているから。姿や顔は知らなくても、声だけはしっかり覚えているわ」
「おい。お前は何を考えているんだ?」
トニヤは警戒を強めて、視線を鋭くした。しかしシャム猫の少女は、全くひるむ様子がない。ついにダーオは、自分の決意をあらわにした。
「あたしは、ママを殺した猫殺しをつかまえたいの。あいつを薄汚い暗闇から引っ張り出して、パパの前に転がしてやる。トニヤの協力があれば、それができるわ。すでに策は練ってあるのよ」
トニヤはすっかり驚嘆して、まじまじとダーオ・ブッチーニを見つめた。目の前にいる女の子は、頭が良いだけでなく、恐ろしく度胸が据わっている。そんじょそこらの理屈を並べても、簡単に納得してくれる相手ではない。
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