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「いったいこれは、どういうことなの!」
ダーオ・ブッチーニは、家へ戻って来た養父の傷だらけになった顔を見るなり悲鳴を上げた。ダーオは大慌てて救急箱を取りに走ろうとしたが、タウの右目の上に大きな絆創膏が貼られているのに気づき、ようやくその場に踏み止まった。
「教えて。どういうことなの……?」
ダーオは表情をきつくすると、養父に向かい合った。しかしその声は、激しい動揺のためか、上ずって震えている。
「少しばかり目の上を切っただけだ。署で応急処置を受けたから、もう大丈夫だ」
「傷の状態じゃなくて、理由を聞いているの。どうしてこういうことになったの?」
「それは言えん。捜査上の秘密だからな」
「まさか、蒼い服の猫殺しにやられたの?」
「そうじゃない。だが、拳闘の心得がある相手に、ちょいと油断しちまったのさ。心配をかけてすまんな」
タウ・ブッチーニは、青ざめて体を震わせている義娘を抱き寄せた。ダーオは養父のコートを手繰り寄せると、分厚い胸に顔を埋めた。
「いったい年に何回こんな怪我をするの? その度にあたしが、どれだけ肝を潰すかわかっているの?」
「わかっているさ。しかしその日の夜には、ちゃんとお前のもとに帰って来るだろう。そしてお前が用意してくれた飯を食って、次の日にはきちんと朝から仕事に行く。俺は、お前が思う以上にタフな猫だ。だから心配などいらんよ」
「だけど、死んだように動かなくなって眠っている夜があるわ。そんな言葉を聞いたって、心配しないわけがないじゃないの。あたしたちは、二匹だけの家族なのよ」
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