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「それでは、お兄さんの未来を占いますよ」
弟嫁のマリーベルが呟いた。ユラユラと揺れるロウソクの光に、黒と銀の縞になった毛並みが輝いた。水面を水鳥が進むような滑らかな手つきで、マリーベルはカードを並べていく。まるで見えない枠組みにカードをはめ込んで、魔法の織物を作っているようだ。タウはテーブルに頬杖をつくと、観念したように深いため息をついた。
タウの未来とやらは、テーブルの向かい側に座った義妹の手の中にあるそうだ。マリーベルの実家は代々続く占い師の家系で、王都の裏街では有名な家だ。よく当たるとの評判で、花街の女猫たちから重宝されている。彼女らは、金払いの良い上客を捉まえるために、ジョッセル家の占いを利用しているのだ。
「マリー。こいつは非番の夜の余興だ。真剣に占う必要なんかないんだ。適当でいい」
タウ・ブッチーニは、降参の言葉を発した。
「ダメだぞ、マリー。兄貴の言うことに耳を貸すな。真剣にやってくれ」
まるで苦虫を噛み潰したように、クシャクシャな表情になったタウとは逆に、彼の弟猫は極めて上機嫌だった。ロブ・ブッチーニは、グラスに残ったスコッチを数回転がすと、グィと一気に飲み干した。
「それじゃぁ、第一の質問だ。マリー、兄貴の結婚は、いったいいつぐらいになるのかな? 俺はどうも、パブのウエイトレスをしている、ジェシカあたりとくっつきそうな気がするんだけどな」
「ロブ、いい加減にしろよ。どうして俺が、あの太った白猫とくっつかなけりゃいけないんだ」
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