9 トニヤの流し目は、伯爵夫人に軽くかわされる

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 蒼い服の猫殺しによる、連続殺害事件の苦々しい解決から数日後、トニヤ・ジョッセルはダーオ・ブッチーニを伴ってロレダーノ伯爵邸にいた。来年度のダーオの進学における後見人を、ロレダーノ伯爵夫人に頼むためだ。 「手紙は読ませてもらいましたわ。あなたはまだ十歳なのに、ずいぶんとしっかりした考えをお持ちなのね」  ロレダーノ伯爵夫人は読み終えた手紙を折りたたむと、最高級(グラン・セニョール)の紅茶を一口すすった。  彼女の前には、繊細な東洋趣味の模様が描かれたティーポットとカップがあり、その向こう側に緊張した面持ちでダーオ・ブッチーニが座っている。  シャム猫の少女は肩に力が入っていたが、少しもたじろぐことはなく、真っ直ぐに伯爵夫人の目を見つめていた。 「ママと一緒に王都へ流れて来た時に、ものすごく苦労しましたから。王都はすごく広くて、最先端の技術があって、お金や物がたくさん動いて賑わっていました。それでも王都は、あたしたち移民の親子に対して、とても冷たい街でした。結局、ママはパンを買うお金を得るために体を売るしかなくて。それでも暮らしていくのがやっとで。あたしたちは王都の底辺であえいでいました。それであたしは、しだいに王都を恨むようになりました。そしていつかこの街を、ひっくり返してやろうと思うようになりました」 「手紙にも書いてあったけれど、怖い考えをお持ちなのね」
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